一般財団法人 京都国際文化協会(Kyoto Intemational Cultural Association)
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「マスメディア」
劉 慧子 (中国)

 私が十四歳の時の親からの誕生日プレゼントは東京ディズニーランドの旅でした。その当時の中国は発展し始めたばかりで、一日中遊べる遊園地がなかったので、私は日本のディズニーランドに行って、とても驚きました。14歳の女の子にとってそれは本当に夢の世界でした。夢の中にしかいないはずのお姫様と私は一緒に写真を撮りました。アニメの中にしか出てこないはずのミッキーは目の前に立っていました。写真館で白雪姫のドレスに着替えたら、私は本当のお姫様になった気がしました。そして店員のお姉さんの笑顔もとても素敵でした。その旅は私にとって今まで一番素敵なプレゼントとなり、その時から、私の心の中の日本はディズニーランドのようなきれいな国になりました。


 高校を卒業して、地元の大学に入り、単調な日々を送る中でいつしか「外の世界を見たい」と強く思うようになりました。特に世界のトップに立っているアメリカに憧れました。親に打ちあけたところ「日本はどうだ、近いし」と日本への留学を勧めてくれました。その一言で、私の心の中に眠っていた14歳ときの記憶が蘇りました。新幹線、高層ビル、ディズニーランド、店員さんの笑顔・・・・、私は海洋環境か、自動車工学のどちらかを学びたかったので、その目的のためにも日本は私にとって理想の国のように思えました。


 しかし、私が日本に留学することを聞いた友達や近所の人たちは、私に日本へ行くのをやめるよう忠告してきました。それは日本では中国人は軽視されたり、差別されたりなど辛い目に遭わされるというのです。それを聞いて私も戦時中の日本人の残酷な行為などを教科書で読んだことを思い出しました。また毎年、靖国神社の問題は中国で大きな騒動を起こし、テレビでは「戦争を起こし、アジア各国の人々の感情を深く傷つけ、いまだに反省しない日本人の態度を絶対許せない」など連日のように報道します。私は14歳の時に見た美しい日本と、テレビや教科書、近所の人たちの話から想像される傲慢で恐ろしい日本―このような二つの矛盾した印象と留学に対する期待と不安を抱きながら、私は意を決して日本に渡りました。


 日本での住まいは東京など大都市ではなく、富士山のふもとにある甲府という静かな町でした。桃やぶどうの生産量日本一を誇り、南アルプスのおいしい水に恵まれた、とてもきれいなところです。私が通っていた日本語学校には、日本の高校生や専門学校が隣接していて、多くの日本の高校生や専門学生とすれ違いましたが、知らない子によく「こんにちは」と挨拶されました。来る前に言われた「中国人は日本で軽視される」などの話とは全然違いました。私はもともと活発な性格で日本では言葉がよくしゃべれなくても、スポーツという共通の切り口から友達を作り一緒に遊んだりしながら日本語を学べたと思います。会話だけではなく、一緒に遊んだり勉強する過程で同じ仲間として見てもらえた時は心から嬉しかったです。日本語がしゃべれるようになると、私はアルバイトを始めました。一緒に仕事をする仲間たちだけでなく、常連のお客さんも自家製の果物や野菜、冬の焼き芋などをよく差し入れしてくれました。友好的な日本の人々のおかげで、私は寂しい思いをひとつもせずに、この国で私の人生に大きな影響を与える大学生活を過ごすことができました。


 中国に一時帰国するたびに、よく親戚や友達に「日本はどうですか?」と聞かれるのですが、「テレビや雑誌などに載っている日本は嘘ですよ。日本人は結構親切だし、日本は生活しやすい国ですよ」と私はいつも答えています。何で私は今みている日本と中国で聞いた日本にこんなに大きな違いがあったでしょうか、私は中国のメディアに疑問をもちました。


 私は今年日本で就職活動を行いました。私は車が好きで、自動車メーカーの就職を希望しました。面接の時に面接官の方はよく「日本はどうですか?」という質問をしました。「自動車技術が発達し、きれいな国です」と私は迷わずに答えましたが、ある面接官に「僕は中国に行ったことがありますが、いく前のイメージと全然違って、とてもよかったよ」というふうに言われました。私はちょっとびっくりして、思わずに「以前のイメージってどんなイメージですか?」と面接官に聞きました。「失礼ですが、以前、中国人結構身勝手で、日本人に対する敵意が強いという印象があったね」と面接官が言いました。
中国と日本は一衣帯水、昔からいろんな交流を行いました。今情報伝達手段こんなに発達しているのに、私は中国人と日本人はお互い国のことを全然正しく理解してないことに驚きました。どこに問題があってこんな結果を招きました?私は自分の経験を考えて、両国のマスメディアに注目しました。


 私が日本に来て少しずつ日本語がわかるようになるにつれて普通のニュースを見たり、新聞を読んだりするようになりました。そこで日本メディアの報道の仕方と視点は中国と大きな違いがあることに気づきました。
   メディアの報道の仕方や視点は社会に大きな影響を与えます。日本人と接して嫌なことがあったわけでもないのに、なぜ私は日本に来る前に「日本はよくない国です」というイメージを持ってしまったのでしょうか。中国のメディアから受けた影響が大きいのではないかと今になって改めて考えました。中国の政治は共産主義で、共産党の一党専制になっています。中国のニュースや新聞などは国内外、政治、経済、外交すべての分野において共産党政権を守るための報道をします。このため、中国はよく国際社会の批判を浴びます。日本に対して、技術が発達し、社会の秩序が正しいなど肯定的な面を報道するが、歴史問題も大きく報道しています。


 日本のメディアも中国の偽造問題や食品衛生や反日テロなど否定的な面を大きく報道する傾向があります。たとえば、最近の八カ国会議で環境問題について、先進国と途上国との溝が深いことがわかりました。日本のメディアはエネルギー資源や環境が絡む話の多くは、中国への批判や責任転嫁論を報道します。しかし状況を正確に認識あるいは理解していない場合もあります。中国の特殊事情である「世界の工場」と「人口抑制策」の二つに対する理解も必要です。すなわち、二酸化炭素排出の約二割は輸出製品製造に伴うものであります。また、中国政府は一人っ子政策が実施されなかった場合、2005年一年だけで約13億トンも排出量がふえていたと主張します。こういう事情をあまり報道せず、批判するだけで、普通の国民に中国側は身勝手だという印象を与えたでしょう。


 両国のメディアはバランスよく、国民が客観的に判断できるような報道してほしいです。
 また中国のメディアは政治だけではなく、社会問題も明らかにしてほしいです。中国では国民の声はなかなかマスメディアに反映されません。そのため、よく国際社会に「人道的ではない」などの批判をされます。同じ問題に対して、100人がいれば、100通りの考え方があります。中国は人口約13億人で、世界第3位の広さを誇ります。56の少数民族がそれぞれ各自の言語や文化、宗教を持っています。このような事情で、今の中国は確かにまだ一人ひとりの意見が聞ける状況ではないのが事実です。でもメディアは政治、社会の問題点を隠すばかりなら、逆に国民の反抗を起こしやすいと思います。政治や経済など、国民の日常生活と少し離れた問題は、メディアの報道によって知ることができます。したがって、メディアの客観的な報道は重要な意義があります。私は日本のマスコミを見て、中国のマスメディアも透明に報道してほしいと思います。


 中国今年の四川大地震の時に、ただちに正直に被災地の状況を報道し、国内国際の支援をいただくことができました。被害をできる限り縮小することができました。社会の進歩と共に、中国のマスメディアも進化しています。


 日本のメディアの報道は国民の不満を公開したり、政府や政治を批判したり、どちらというと問題点を明らかにする報道の仕方です。ただし、日本の場合は、同じことについて過剰な報道をし、視野が少し狭いと思います。最初、テレビをみて、殺人事件や強盗事件などが起きた途端に、すべてのチャンネルのニュース時間はその事件のことばかり放送することに驚きました。実際には中国にもいろいろな事件が起きていますが、メディアはほとんど放送しません。日本のように早く正確に現場から生放送するほうがいいと思いますが、その反面、そんなに大量の放送で国民に不安を与えたり、警察に対する不信感などが高まらないでしょうか。また犯罪の予備軍にはどんな影響を与えるでしょうか。「大きな犯罪を起こせば有名人になるから」こういう動機で犯罪を起こした犯人もいます。これはメディアの過剰な報道が招いた結果ではないでしょうか。また、現場周辺の住民や当事者の職場や友達、親族への取材は、当事者のご家族の心の傷を深めただけで、事件の解決にどの程度役に立つというのでしょう。報道の正確さは重要だと思いますが、適正で適量の報道も重要だと思います。


 中国のメディアと日本のメディアを比べると、もうひとつ大きな違いがあります。中国の場合は国際ニュースが多いですが、日本の場合はあまりありません。メディアは視聴者が関心があるものを放送すればいいと思う方がいると思います。最近新聞やテレビを見ると、日本国内の食品やガソリンなどの値上げが話題になっています。しかし値上げの原因は日本国内の問題にとどまらないはずです。今世界は「地球村」と言われています。アメリカ経済の低迷、中国の大地震、イラク戦争など、「ただよその国のことで、援助できればするが、ほとんど日本人と関係ない」という思いやりだけではすまないと思います。アメリカの経済の伸びは日本の為替レートに大きな変動を起こしますし、中国の大地震での米産地が大きな被害を受け、世界の食糧市場にダメージを与えていますし、イラクなど原油輸出国がずっと混乱した状態が続くと原油価格の不安定要因にもなります。メディアは身近の問題を報道する際に、国際ニュースを私たちの問題に関連付けて報道してほしいと思います。日本はもともと島国で外来文化を吸収しにくい環境であります。今観光や留学や仕事などで日本に来る外国のかたが年々増えてきます、日本ももっと積極的に外来文化に触れたほうがいいのではないでしょうか?


 マスメディアは大衆へ情報を伝達し、巨大な力をもち、社会を動かすことができます。日中友好は首脳会談で解決できることではありません。両国のマスメディアは自分の国も相手の国もバランスよく、正しい情報を国民に伝え、国民の心の先入観を除き、社会発展に促進できるメディア報道をするべきではないか。


 私は日本に来て7年目を迎えました。最初のような新鮮感や好奇心、驚きなどもなくなりました。日本での生活は今の私には当たり前すぎで、自分が外国にいるという感覚がなくなりました。今回就職活動のきっかけで、私は自分が見ている日本をもう一回考えて見ました。今また「日本はどうですか?」と聞かれると「自動車技術が発達し、人々が親切できれいな国です」という答えはもう私が見ている日本をすべて言い表せません。
   私は今見ている日本はいろいろな問題を抱きながら、解決方法を探っています。改革を進める中、政府の迷いや国民の失望がありますが、自分の国をディズニーランドのようなきれいな国になるようにとがんばっている国だと思います。



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